1.光の天使

写真などではよく飽きずに見たものでしたが、天使を見るということは難しいことです。写真などがなくても天使を見ることが出来る人々もいます。そして興味深いことを話してくれるのです。例えば守護天使はみな、女性の姿をしているとか、そういうことです。私も自分で見ることが出来るようになってからはこのような話には驚かなくなりました。若い者から順に使命を受ける誕生天使は、人が生まれると彼らにつきます。もう少し歳をとり、しかし厳格ではない天使たちは、人が恐れ、痛みを感じることなくこの世を去れるように手助けをしています。

私たちが祈る時、天使は耳を傾けています。しかし彼らを呼ぶ一番の方法は、私の聞いた話では、笑うということです。天使たちは喜びに反応します。なぜなら彼らは喜びから生まれたからです。実際、怒りや憎しみで心が曇っている時、彼らは私たちのもとへ来ることが出来ません。

私たちは全ての天使が羽をもっていると想像しがちですが、そうではありません。全世界を覆うほどの黄金の羽を持つ天使というのはいますが。もし私たちが、太陽を直視できるほどの眼を持ち合わせていれば、この世を動かしている膨大な数の天使たちを見ることが出来るでしょう。より穏やかな天使たちは、月から微笑みかけています。

天使たちはとわに続く生命を持ち、この世の創造神を称えながら、神の王座の周りを舞っています。確かな耳をもつものであれば、彼らの歌声を聞くことが出来るでしょう。天使たちの歌う旋律は難解だという人々もいますが、リズムはシンプルなものです。行進曲みたいだ、という人もいます。私もある意味では、この表現がいい得て妙だと思うのです。

天使の声をしばらく聞かずにいた時、私は自らまでもが見えなくなる時がありました。天使たちをよく見るある人がこれを聞いて、驚いた様子で「本当に、見えないの?」と言ったのです。「自分自身の中に天使がいるでしょう。皆、そうなのよ。私はいつでも見ることが出来るし、あなただってそうだと思うわ」私はため息をつきながら、「見えないよ」というしかありませんでした。そして天使がどんな姿をしているのか、尋ねてみたのです。「天使って、僕たちに似ているの?」

「そうでもあり、そうではないの」天使を見ることのできるその人はなぞめいた言葉を発しました。「自分が何者なのかという考え方によるのよ。あなたの天使は、まさにあなたの心の中心を照らし出す一条の光ね。それは原子よりも小さいけれど、待っていればいいの。いったん近づくことが出来れば、あなたの天使は大きくなるわ。近づけば、近づくほど、天使というものは大きくなり、光の塊になるの。こうなれば天使の真の姿を目の当たりにし、自分自身も見えてくるでしょう」

ですから私は常に、天使を探しています。時々、静かに座り、自分の内面に目を向けます。何かが見えるようになるまで、そう長いことかかりませんでした。「天使だったんだよね?キャンドルを手に持って…」一瞬のうちにその面影は消えていきましたが、心の高まりは抑えきれませんでした。次に見るとき、私の天使は光をふりまきながら、火の粉の舞うたいまつをかかげ、かがり火を照らすでしょう。

これが天使を見ることの出来る人が私に約束したことでしたが、素晴らしい光景をひと目でも見ることの出来た私は、このことを信じるに十分でした。


2.聞いてる?

ダンシング・ザ・ドリーム
〜夢を踊りながら〜
マイケル・ジャクソン/1992

僕を知ってる?

君は自分自身を知ってる?

僕たちはどこから来たのだろう?

どこへ行こうとしているのだろう?

この世の意味ってなんだろう?

答えを知っているものはいない

永遠だ、と僕は思う

至福から生まれ、

至福の中で生かされ、

至福へと戻ってゆく

これを理解できないものは

恥を知るがいい

耳を傾けているのだろうか?

この僕の身体には

エネルギーがよどみなく流れ

時の河の中で

時代は流れ、来ては去ってゆく

僕はかくれんぼをするように

瞬時に現れ、かき消える

僕は原子になり、波になる

稲妻のような速さで旋回する

僕は先頭を切って駈ける波動になる

僕は高貴なものになる

ナイフになる

行為をするものになる

それ自体が行為なのだ

僕は天の川にある

空虚な空間の銀河になる

僕は気が触れたのだろうか

僕は考えるものであり、考え自体であり、思考になる

探すものになり、探し、探すこと自体になる

僕は雨粒になり、太陽の光になり、嵐になる

僕は現象になり、領域になり、形態になる

砂漠になり、大海になり、空になる

僕は僕や、人々の内に胚になる。

透明で束縛のない意識

真実、存在、至福に僕はなる

限りない表現の中を

かくれんぼをするように

僕は瞬時に行き来する

永遠といえるかもしれない

身体のうちに

時代は移ろう

至福から生まれた僕は、

いつでも変わらぬまま。

至福の中で生かされる

僕のダンスの中で共になろう

今すぐ共になろう

自分自身を忘れたならば

この至福を理解することが出来ない

永遠という海の底で

祈るという苦しみから離れ、

やりとうそうではないか

考えず、躊躇せず、

自らのうちに抱合しながら

創造するただひたすら創造する

永遠だ、と僕は思う

至福から生まれ、

至福の中で生かされ、

至福へと戻ってゆく

これを理解できないものは

恥を知るがいい

耳を傾けているのだろうか?

3.1989年 ベルリン

皆、その壁を憎んだけれど、何が出来たのだろう?突破するにはあまりにも巨大すぎたのです。


皆、その壁を恐れたけれど、この意味がわかりますか?壁を乗り越えようと思うものは、殺されました。

皆、壁を憎みました。憎まないものがいたと思いますか?平和への対話が試みられているのに、壁を作るひとつのレンガさえ、崩せなかったのです。

壁は無慈悲に笑いました。「これは君達にとって教訓になるだろうよ」と壁はおごった調子で言いました。「永遠にこのままにしたいと思うなら、石なんか投げるなよ。憎しみや、裏切りの方が勝るのだから」

皆、壁が正しいということを知っていました。そしてもう少しで屈服しそうになったのです。このとき、あることが起こりました。皆、壁の向こう側に誰がいるのかを、想いだしたのです。おばあさん、いとこ、姉妹、妻。夢にまで描いた愛する顔が、見えてきたのです。

「何が起きたんだい?」壁は身震いしながら尋ねました。何をしているのか知らないうちに、皆、愛するものを探し求め、壁の向こうを見ようとしたのです。静かに、ある人からある人へ、愛は広がっていきました。

「やめろ!」壁は金切り声を上げました。「壊れてしまう!」しかし遅すぎたのです。何百万人もの心が互いを見つけたのでした。壁は風化する前に、崩れ落ちました。

4.少年と枕

ある一人のかしこい父親は、息子に教えたいことがありました。「ここに、この国でも稀なガチョウの羽を詰めて、絹で刺繍が施された枕がある」と彼は言いました。「街へいって、これに見合うだけのものととりかえてきてごらん」

はじめに少年は、お金持ちの羽商人のいそうな市場へ行ってみることにしました。「この枕と、何をとりかえてくれる?」と少年は尋ねました。商人は目を細め、「これは本当に珍しい、高価なものだからね、ダカット金貨を50枚と交換しよう」

少年は、感謝してその場を去りました。次に道のわきで野菜を売っている農家の女の人に出会いました。「この枕と、何をとりかえてくれる?」少年は尋ねました。彼女は枕に触り、「なんてやわらかいのでしょう!この枕の代わりに銀の塊をあげるよ。私の疲れた頭をこの枕の上にのせたらどんなだろう!」

少年は感謝して、先に行くことにしました。ついに彼は、教会の階段を掃除している農家の少女に会いました。「この枕と、何をとりかえてくれる?」奇妙な笑顔で少年を見ながら、少女はこう答えました。「1ペニーあげるわ。だってこの枕ったら、ここにあるような石とは大違いですもの!」少年はこれを聞くや否や、枕を少女の足元に置きました。

少年は家に帰り、父にこう言いました。「この枕に一番いいと思う値段をつけてきたよ」こう言って少年は1ペニーを差し出しました。「何?」父親は叫びました。「あの枕はダカット金貨何百枚という価値があったんだぞ!」

「お金持ちそうな商人はそう言っていたよ」と少年は言いました。「でもすごく貪欲そうだった。金貨を50枚くれるって言っていたけど、僕はもっといいものととりかえようと思ったんだ。農家の女の人は僕に銀の塊をくれるっていったよ」

「気が狂ったのか?」と父親が言いました。「銀の一塊が金貨50枚よりも価値があるなんて話あるわけがない!」少年はこう答えました。「これ以上のものととりかえると子どもを養っていけないからと言っていたよ。でも僕はもっと他のものととりかえられると思った。それから教会の階段を掃除している女の子に会ったんだ。そしてこの1ペニーととりかえたんだよ」

「お前は智慧というものをなくしてしまったのかい?」と父親が言いました。「銀のひとかたまりより1ペニーの方が価値があるなんて話、きいたこともない!」

「でも愛情があったんだ」と少年は答えました。「神様に奉仕していたから、神様の家である教会の階段はどの枕よりもやわらかそうだった。この世で一番貧しい人よりも貧しいというのに、神様へ捧げる時間があったんだよ。だから僕は枕を彼女にあげたんだ」

この瞬間、かしこい父親は微笑みました。息子を抱き、目に涙を浮かべながらこうささやきました。「お前はよく学んだね」

 

5.自由をつかむ

この狂気、この動乱
時間、空間、労力、
そんなものはただの思想にすぎない
この世界で概念化され、創造された
この愛、この憎しみ
始まりであり、終焉でもある
光陰矢のごとく、時間はまた曲げられない
破られた約束が意味するものは
送られることのないラブレター

6.しかし心に背かず

彼らは、ダンボールで作られたバラックに住む、貧しいものたちを見た。そしてこの住人らの家のドアをたたき、計画を立てた。アスファルトでできている駐車場の下からのびる膨大な量のセメントやガラス。家と呼ぶことの出来ぬ家。「ほかにご要望は?」彼らは忍耐強く尋ねた。「あなた達は貧しすぎるんです。暮し向きが良くなるまで、ここでなんとかできるでしょう?」

頭では肯定したが、心は否定した。

街では電気が必要だったので、彼らは山に流れる川を利用してダムを作った。水量が上がるにつれ、うさぎや鹿の死体が漂ってきた。ヒナがのったままの巣も流れてきた。親鳥はやるせなく鳴き続けていた。「そう素晴らしい風景ではないが」と彼らは言った。「今や、何百人という人々が夏中、エアコンを使えるようになったんです。あるひとつの山の流れよりも、重要なことでしょう?」

頭では肯定したが、心は否定した。

彼らは抑圧され、テロに苦しむ遠い国の存在を知った。そして、対抗するために兵力を送った。砲撃によって国は瓦礫と化した。人々は恐怖におののき、村人は毎日のように、荒削りの木棺に収められた。「いつか出る犠牲者のために、用意しておかねばならないのです」と彼らは言った。「もし何人かの罪なき味方が傷ついたら、それは平和の代償と言うことができるのではないでしょうか?」

頭では肯定したが、心は否定した。

月日がたち、彼らは年をとった。自分の家でくつろぎながら、彼らは過去を振り返った。「私たちはよい人生を送ったね」と彼らは言った。「そして正しいことをした」彼らの子ども達が彼らを見下ろして、なぜ貧困や、環境汚染、戦争がまだ続いているのかと尋ねた。「もうすぐ分かるときが来るよ」と彼らは答えた。「人間というものは、弱くてわがままだからね。かなりの努力なしには、解決しないものなんだ」

頭では肯定したが、子ども達は心のままにささやいた。「No!

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