EJ:アフリカ大陸に戻ってくることについて、なにか特別な感情がありますか?

MJ:僕にとってここは、「文明の夜明け」なんだ。初めて社会が生まれた場所なんだよ。愛に満ち溢れてる。つながりを感じるんだ。この世の全てのリズムってここから来ているんだね。故郷なんだよ。

EJ:
1974年にもあなたはここを訪れていますが、前回と比べるその印象はどうですか?
 
MJ:
今回来て初めて気付いたことがたくさんあるよ。人とか、生活、政府のこととか。でも一番目を向けているのは、リズム、音楽、音楽を演奏する人たちだ。何よりもまずそこに目がいっちゃうよ。彼らのリズム感といったら、信じられないくらい。子ども達がどんな風に踊るのか、そこで分かるよ。こんな小さな赤ん坊だってドラムの音を聞けば、踊りだすんだ。リズム、リズムが心に響いて踊りだしたくなるんだ。アメリカの黒人だって同じものをもっているんだね。

EJ:本物の王になった気分は?

MJ:考えたこともなかったから、なんて答えていいのか分からないけど、でもとにかく光栄だよ…
 
EJ:
音楽、リズムといえば、最近のアルバム(デンジャラス)にゴスペルを取り入れたのはなぜ?

MJ:「ウィル・ユー・ビー・ゼア」はカリフォルニアの僕の家、ネバーランドで書いたんだ。ムズカシイことじゃないよ。自分のつくった曲を自分のものですっていう方がムズカシイんだ。だって僕はただ感じるだけで、どこか高いところでなされることなんだよ。僕は音楽が流れてくる器という感じで、それって素晴らしいことだよね。僕は出来上がった曲を自分が作ったなんていうつもりはないよ。それは神のなせる業だから。神がメッセンジャーとして僕をお使いになっているんだ。

EJ:アルバム「デンジャラス」のコンセプトとは?

MJ:このアルバムは、チャイコフスキーのくるみ割り人形組曲っぽくしたかったんだ。今から一世紀の後にもなお、聞いてくれる人があるように。何かずっと生き続けるようなものをね。今から何百年、何千年の後に、世界中の全ての人々、子ども達、ティーンエイジャー、両親たち、皆が人種を超えてなお、このアルバムから歌を聞いてくれるように。僕はこのアルバムに生き続けてもらいたいんだ。

EJ:
今回のこの旅行では、子ども達のところへ訪ねる機会が多くなっていますが?

MJ:みんな知ってると思うけど、僕は子ども達が好きなんだ。赤ん坊もね。

EJ: それと動物もね。

MJ:ええと、動物とか子ども達がある意味、想像力の原点になっているって思うんだ。この世で起こるいろんな出来事や条件によって大人になると失われてしまうある力がね。偉大な詩人がこう言っているよね。「子ども達を見ると、神がまだ我々をお見捨てになってはいないのだと感じる時がある」と。インドの詩人タゴールの言葉だよ。僕にとって、子ども達の中の純真さが無限の想像力の源になっているんだ。これは全ての人間に共通することだと思うよ。でも大人になると、慣れてしまうんだね。自分や、身の回りで起こることにすっかり慣れてしまうんだ。
愛だよ。子ども達を愛すべきなんだ。嘘をつくことがないし、不満を述べ立てることもしない。ただ開かれた心をもっているんだ。手を広げて僕らを待ってくれてるんだよ。思い込みで相手を判断することもない。皮膚の色で人を見ることはないんだ。それが子どもらしいということなんだ。大人が子どもらしさを忘れているのって問題だと思う。子どもらしさをどの程度持ち続けられるかっていうのは必要なことだし、大切なことなんだよ。小説家、詩人、彫刻家が創造し、歌を作っていくという上でもね。
僕たちが創造するのは子ども達と同じような純真さ、意識からきているんじゃないかな。僕はそれを子ども達、動物、そして自然から感じとっているんだ。舞台に立ってオーディエンスからそういうことが感じられないと、僕は動くことが出来ない。原因と結果っていうの知っているよね。そういうのを拮抗させるんだよ。僕はオーディエンスから力をもらうからパフォーマンスが出来るんだ。

EJ:それでそういう全てのことはどこへ向かっていくと?

MJ:僕は神がある役割を与えるため、人々を選んでいると思うんだ。ミケランジェロ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、モーツァルト、モハメド・アリ、マーティン・ルーサー・キングが選ばれたようにね。こうしてその人には使命が課せられるんだ。僕は、今ここにいる本当の使命の表面さえもかすっているとは言えないけど、でもとにかく自分自身を打ち込ませているよ。
僕は芸術には物質的なものと精神的なもの、人間性と神性を統合させるっていう最終目的があると思うんだ。それがまさに芸術の存在理由だし、僕がやろうとしていることだと信じているよ。僕は自分が、音楽の流れてくる器として存在していることが嬉しいんだ。僕たちの生きるこの世界って計り知れないほど大きな交響曲だと心の底から感じる時があるよ。全ての創造の原点って音じゃないかと思うんだ。ただの音ってだけじゃなく、音楽としての音。「天上の音楽」という表現を聞いたことある?文字通りだよね。ゴスペルだとこう言うんだよ。「そして主は塵から人間をおつくりになられた。そして鼻孔に生命の息吹を吹き込まれ、人間に命をおあたえになった」。
僕にとってはこの生命の息吹が生命の音楽ということを意味するんだよ。そして創造というものに広がってゆくんだ。アルバム、デンジャラスのある曲の中で僕はこう言ってる。「時代の中に生きつづけ、自身の中に脈打ち、打ち寄せる潮のリズムを踊ってきたような歌」とね。これはまさに言い得て妙という表現なんだ。だって僕の
DNA構造の外側で聞こえるバイオリズム、新たな奇跡としかいいようのない音程が、星々の運行をもつかさどっているんだからね。同じ音楽が、季節の音、心臓の鼓動、鳥の渡り、海の潮の満干、この世界の循環、進化と退廃の音だってつかさどっているんだ。
音楽。リズム。僕のこの人生における目標は、自分が幸運にも授かったものをこの世界に送り出すことなんだ。僕の音楽、ダンスを通じて表現する、神聖な調和という恍惚感をね。それが今の僕の目標であり、存在理由でもあるんだよ。


EJ:
政治についてはどうですか?

MJ:政治に介入したことは一度もないよ。でも僕は音楽が人の心の中の荒れた獣性を静めることが出来ると思うんだ。細胞に音楽を聞かせているところを顕微鏡で見てごらん。細胞は動いたり、踊りだしたりするんだよ。魂を揺さぶっているんだね…僕は全てが音楽だと思うんだ……ねぇ、これって僕がここ8年間言いつづけてきたことなんだよ。
Interview in Ebony/Jet Magazine
1992/3 in Africa
The End
EJ:エボニー・ジェットマガジンインタビュアー
MJ:マイケル・ジャクソン